FULL

壁に背をつけた藤島くんが、

「オレ、由香さんを怒らせるようなこと、しちゃいました?」

と言った。

なにも答えない私を見て、

「困ったなぁ…」

うーんと唸るようにして考え込んでしまった。


べつに、藤島くんを困らせたかったわけじゃないの。


私が慣れていないだけ。

私が不器用なだけ。


「………ごめん。なんでもないの。ほら、最近ちょっと忙しかったじゃない?だから、疲れてるんだと思う」

そう言って笑って見せたけど、藤島くんは、納得できないというような表情をして私を見る。

それでも、構わず口を開いた。

「藤島くんも、早くお昼行ってきたら?
こんなところに居たら、また余計な仕事を頼まれちゃうじゃない。私も、そろそろ戻らないと」

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