好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
「……帰る」

あからさまに不機嫌な声を出して、私は立ち上がった。


「は? なんで」

課長がちょっと焦ったような顔をして私を見上げる。私の機嫌の悪さはすぐに伝わったみたいだ。多分、その原因が自分にあることも同時に感じ取ったんだろう。


「だって一緒にご飯食べててもつまんないんだもん」

「悪かったって。なんか喋ろうぜ」

「いいよ。それじゃ私が構ってちゃんみたいじゃん」

もうこの時点ですでに構ってちゃんなのかもしれないけど、我慢して嫌な思いをしている意味もないと思った。


玄関に向かう私の腕を、うしろから課長が引っ張る。振り向くと、すぐそこに課長の顔があった。

……唇が近い。
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