好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
まあ、私が入社する前のことなら知らなくても仕方なかったかもしれないけど。


……でも、そうか。

課長って、そういえば自分のことあまり話さないな。悩みを相談するのも、いつも私ばっかりだった。

本人が話したくないことを無理に聞くのはよくないし、そんなことをするつもりもないけど、そうは思いつつも、課長が今までなにも話してくれなかったことに対して、急にどこか寂しさを感じた。

それに……飛び降りた昔の恋人って、どんな子? その子の悩みを聞いてあげられなかったことを、もしかして今もずっと後悔してる?

もしそうだとしたら、だから代わりに私の悩みを聞いてくれたの? なんて。

……いやいやきっとそんなことはないよ。そうだとしても、別にいいじゃん。課長はいつだって、私の話を聞いてくれた。この前のキスは意味が分からなかったけど、でも優しい人だ。それは間違いない。

だったら別に、なんだっていいよね。恋人同士じゃないんだし、課長が優しくしてくれる理由がどうであったって別にいいじゃん。


仕事が終わり、店を出ると、ちょうど携帯が鳴った。

もしかして課長からのメール?と思ったのはなんでだろう。別に約束もしてなかったのに。


「……あ……」

それは、俊からのLINEだった。
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