好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
「マジで?」

と、俊は驚いた顔を見せたけど。でも、なんとか信じてくれたようで、

「分かった」

と言ってくれた。

ただし。

「……章子さ、彼氏がいるならいるって先に言えばいいじゃん。思わせぶりな態度とりやがって」

と、結構グチグチ言われたけど。意味が分からない。先に浮気したのはどっちよ。思わせぶりな態度なんてとってないし!

でも、ここで私が言い返したりとかしたら余計話がこじれると思った。なので、「そうだね、ごめんね」と、私が悪者になることにした。プライドの高い俊には、こうした選択が一番合ってるだろう。


その後、なんとか俊はひとりで帰ってくれた。改札の向こうに消えた俊の背中から、ゆっくりと課長に視線を移す。

「……いつから付き合ってるんでしたっけ、私たち」

……せっかく助けてくれたのに、ついそんな憎まれ口を叩いてしまった。昨日のキスのことと、昼間美希ちゃんに聞いた課長の過去のことが引っかかって、素直になれない。すると案の定、「かわいくねえな」と返される。
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