好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
部屋に入ると、いつもみたいにリビングダイニングにバッグを置いて、テーブルの前に座らせてもらった。
もう、いろいろ慣れてきちゃってるなあ。

「テレビ観る?」

「……いい」

「そう?」

課長は一度手に取ったリモコンをテーブルの上に戻した。


「ていうか、なんか俺に対してモヤモヤしてることあるんじゃないの」

課長本人から不意にそう聞かれ、私は思わず目を見開いた。ああ、それだけ態度に出てたんだろうな、と、今日一日の自分の様子を振り返る。


「……昨日のことだよな」

「え?」

「昨日のことは、悪かった」

「いや、そのことだけじゃなくて……」

「なに?」

「聞いていいかどうか、分かんないから」

「なんだそら」

「んー」

「……別に、お前から聞かれて困ることなんかなにもないけど」

……なんでそんなこと言うの。
『お前から』なんて言われたら、ちょっと特別みたいで、なんか、ドキドキしてしまう。そんな意味で言われたんじゃないのは分かってるけど。
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