好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
「でもまぁ……」

少しの間の後、課長は続けた。


「青田が。あれだけ仲はよかったのに、なにも相談してくれなかったのは、確かにショックだった。事件を機に青田は退職したから、その後一度も会えなかったしな。で、お前が入社してくる少し前に、俺はその支店から今の支店に異動してきて、数日後に新入社員のお前と出会った。正直、青田がなにも話してくれなかったのを引きずった状態だったから、お前がなにかあればすぐに相談してきてくれたり、いつも自分のこと包み隠さずにいろいろ話してくれたのはすごくうれしかった」

……確かに、私は昔から誰に対しても自分のことをオープンにするタイプだった。まあ、俊のことは話せない人が多かったけど。新入社員としてこの店に配属されて、わりとすぐに課長と仲よくなって、上司と部下としてとはいえ、すぐにオープンになれた。それは単純に、私がそういう性格だっていうことなんだけれど、だからこそ、それがうれしかったと言われると、私もうれしい。


「でもそれって、やっぱモモと青田を比べてることになんのかな」

「……そういう比べ方なら、別にいいよ」

だって、結果的に私にとってはプラスなことを言われているわけだし。

……あ、そうか。もしかしたら私、課長に特別な女の子がいるってことが、単純に嫌だったのかな。


私が課長にとっての一番でありたかったのかな。
< 151 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop