好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
「……」

課長は立ち上がらず、チャイムを無視しようとしているのか、黙りこくる。


「……チャイム鳴ってるけど」

「分かってるよ。居留守だよ。お前も黙れ」

「だま……」

たった今、いい雰囲気でキスした相手に黙れとか言わないでよ。
ちょっと頭にきたので、私が立ち上がって玄関に向かうと。

「あ、バカ、俺が行く!」

と、今度はバカ呼ばわり。まあ、最初から私が出るつもりはないけどさ。万が一会社の人の訪問だったらまずいし。


……あ、でも私たちって、これでセフレじゃなくなるのかな……? ちゃんとした、恋人? そうだとしたら隠さなくてもいいのかな? いやでも周囲に知られたらどっちか転勤になるよね。でもバレるよりはいいのかな、うーん……。

とかごちゃごちゃ考えていたら、課長が玄関を開ける音が聞こえた。

と、ほぼ同時に、訪問客の名前を呼ぶ課長の声も聞こえてきた。

それは、予想外の名前で。


「青田……?」
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