好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
上司に『今晩空いてるか』と聞かれ、予定もないのに『忙しいです』と答えるのはやっぱりよくないだろう。もちろん、その誘いがいやらしい考えにもとづいた誘いであれば全力で断っていいけど、高柳課長に限ってそれはない。
別に、課長が真面目だとか女性に興味がなさそうとか、そういうわけではなく、むしろ飲み会なんかでは酔っ払った男性同士で下ネタで盛り上がってることもある。だからそういうわけじゃなく、単純に、誘ってる相手が私だからだ。美希ちゃんならともかく、いつもギャアギャア言い合いをしてる、その上見た目もちんちくりんな――自分で言って虚しくなるけど――そんな私を、『いやらしい』目的で誘うわけがないということ。
じゃあなんで誘ってくれたのか、それは前後の会話、そして課長の口調や雰囲気で、充分に分かった。
――私を励まそうとしてくれてるんだ。
それが分かったから、私は課長の誘いに首を縦に振り、業務後、ふたりで駅前で待ち合わせをして、その後、課長に飲み屋さんに連れてきてもらった。
いやらしいことが目的ではないとはいえ、一応、ほかの社員さんたちには内緒で、こっそり飲みに来ていた。変な噂が立つのは嫌だから。ただでさえ、『付き合っちゃいなよ』とか言われてるし。
課長に連れてきてもらったこの飲み屋は、駅前から少し外れたところにあることもあり、初めて来る場所だった。だけど、店内は明るいし、広くはないけど綺麗だし、若い人もたくさん来てるし、とても雰囲気がいい。
「お、高柳くん、久しぶりだね」
「こんにちは」
店内に入るとすぐに、『店長』という名札を付けた男性が課長に気づき、話しかけた。課長はこの店長さんと顔なじみのようだ。
「そちらの方は……」
その店長さんが、私に視線を向ける。あ、どうしよう。「彼女」って誤解されたら。私がそんなことを考えていると、店長さんは、
「親戚の子かい?」
なんて言い出し、課長がブッと愉快そうに吹き出した。
別に、課長が真面目だとか女性に興味がなさそうとか、そういうわけではなく、むしろ飲み会なんかでは酔っ払った男性同士で下ネタで盛り上がってることもある。だからそういうわけじゃなく、単純に、誘ってる相手が私だからだ。美希ちゃんならともかく、いつもギャアギャア言い合いをしてる、その上見た目もちんちくりんな――自分で言って虚しくなるけど――そんな私を、『いやらしい』目的で誘うわけがないということ。
じゃあなんで誘ってくれたのか、それは前後の会話、そして課長の口調や雰囲気で、充分に分かった。
――私を励まそうとしてくれてるんだ。
それが分かったから、私は課長の誘いに首を縦に振り、業務後、ふたりで駅前で待ち合わせをして、その後、課長に飲み屋さんに連れてきてもらった。
いやらしいことが目的ではないとはいえ、一応、ほかの社員さんたちには内緒で、こっそり飲みに来ていた。変な噂が立つのは嫌だから。ただでさえ、『付き合っちゃいなよ』とか言われてるし。
課長に連れてきてもらったこの飲み屋は、駅前から少し外れたところにあることもあり、初めて来る場所だった。だけど、店内は明るいし、広くはないけど綺麗だし、若い人もたくさん来てるし、とても雰囲気がいい。
「お、高柳くん、久しぶりだね」
「こんにちは」
店内に入るとすぐに、『店長』という名札を付けた男性が課長に気づき、話しかけた。課長はこの店長さんと顔なじみのようだ。
「そちらの方は……」
その店長さんが、私に視線を向ける。あ、どうしよう。「彼女」って誤解されたら。私がそんなことを考えていると、店長さんは、
「親戚の子かい?」
なんて言い出し、課長がブッと愉快そうに吹き出した。