好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
すると課長は。


「…連絡があったんだ。青田から」

「青田さんから?」


青田さんは以前、課長のことを恨んでると言った。

本当か否かは分からないけど…そんな課長を呼び出して、何をする気だろう。


「用件は聞いたの?」

「話したいことがある、とだけ」

「そう……」


あんまりいい想像は出来ないし、いい気分もしない。

けど、行くなとも言えない。

課長と青田さんの間には、私には分からない二人の関係があるはずだし、それは私が下手に口を出していいことじゃない。


「う、うん、全然いいよ。行ってきて」

ちょっと不自然な笑顔になってしまったかもだけど。
でも、ちゃんとそう言えた。


「でも…、」

「でもって何!
あんましごにょごにょ言ってると余計疑わしいぞ!
大丈夫だよ、分かってるよ! 向こうが会って何話すつもりなのかは知らないけど、課長に変な気がないことはきちんと分かってるから!」

努めて明るくそう言った。
しんみりとこんなことを言っても、それはかまってちゃんにしか見えないだろうし。


「…ん、じゃ、会って話したことは、全部お前にも話すから」


別にそんなことしなくてもいいし、本当に疑ってはないのだけれど、


「分かった」

課長がこう言ってるのだし、大人しく頷いとこう。課長も疑われたくないんだろうし。


それにしても青田さんは、課長と二人きりで会って、何を話すつもりなんだろう。

もしかして、あの日課長の家を訪ねた時、本当は私がいなければ話したかったことなのかな?

それともそうじゃなくて、私のこと?私の悪口か何か?


…うーん。考えても分かんないや。
まあいいか。課長は青田さんとの会話を全て話すって言ってくれてるんだし。

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