好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
その後は、俊の話題もそこそこに、仕事の話とかもしながら料理とお酒をいただいて。しばらくしてから、「あんまり遅くなると親御さんが心配するだろうから」と課長に言われ、まだ二十二時にもなってない時間だったけど、お店を出ることになった。
一瞬、「また小学生扱いしてるのか?」とも思ったけど、そうではなく、純粋に心配してくれてたみたいだった。やっぱりいい上司だ。
しかも、お会計は、課長が奢おごってくれた。私の相談や愚痴を結構聞いてもらったのに、支払いまでさせて申しわけなく思った。課長、このご恩は仕事で返しますんで。
さすがに、お店を出てからタクシー代を渡された時は断った。駅から家まで歩いて五分のところにあるし、そこまでしてもらうわけにはいかない。駅までは一緒に歩いていった。お互いの家は逆方面だけど、ふたりとも電車には乗るから。
駅に着いてから、課長に「心配だから、家に着いたら一応連絡して」と言われた。課長は意外に心配性らしい。でも、「課長のメアド知りません」と言うと、課長は「ああそうか」と言って、私たちはこれを機にメアドを交換した。
LINEが主流の近頃、誰かとメールアドレスを交換するのは久しぶりな気がした。課長もLINEにすればいいのに、と言ったけど、そういうのはよく分からないから、と断られた。
家に着き、とりあえず課長にメールを打った。今日のお礼と、家に無事に着いた報告を。
五分くらいで返事が来た。『了解』という簡素な文章だった。それを確認した後、私はひとまずお風呂へ向かった。
お風呂から上がって部屋に戻った後、私はベッドの上で、慎重にLINEのメッセージを打ち始めた。……俊に、自分の気持ちを伝えるために。