好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
すると俊は、ギロリと私を睨んだ。

「あのさ、俺がお前のことずっとうざいって思ってたの、まだ気づいてないの?」

「え……?」

うざい……? 俊が? 私のこと?


「就職とか正社員とか、ことあるごとにいちいち言ってきて、ウンザリだったんだよ」

「……だって、昨日のメール……」

「ただ別れようっつっても、お前、分かってくれなそうじゃん。だから、確実に別れてくれそうな方法が見つかるまで、適当な返事して保留しとこうと思ったんだよ」

「……」

「でもよかった。これでお前も諦めついたろ? 悪いけど、今はこいつと付き合ってんだ」

そう言って、俊は隣にいた女の子の肩を、グイッと自分の方へ引き寄せた。


……悪い夢でも見てるみたいだ。

俊に私のほかに彼女がいたこともそうだけど、なにより、ずっと大好きだった俊に、いつからかずっとうざいと思われてたなんて。私はただ、俊と将来的にも一緒にいたかったから、だから就職してほしかっただけなのに、その思いがうざかったなんて。


……ああ。これが少女漫画とかならさ、たとえば私のうしろから王子様みたいな人がやって来て、そして俊のことブン殴って、私の手を引いて走り出していくんだ。

そんな、ありもしない妄想を頭の中で描いていると――グイッと、うしろから誰かに手を引かれた。
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