好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
「え……?」

振り向くと、そこにいたのは王子様――じゃなくて。


「課長……」

ああ、そういえば課長と一緒にいたんだ。恥ずかしいところ見られちゃった……。今日は、俊とのノロケ話を課長にたくさん聞いてもらう予定だったのにな。

そんなことを考えていると、課長は……。

「百瀬、探したぞ」

「え?」

百瀬? 探した? 近くにいた俊に駆け寄っただけで、探すほど離れてはいなかったはずだけど……?


「お前、事務ミスしてたぞ。早く戻って処理しろ」

「え?」

「すみません、こいつ連れて帰りますね」

課長は俊にそう言うと、私の手を引いたまま歩き出した。


「え? え?」

わけも分からず、ただ課長に引っ張られながら歩く。振り向くと、俊とその隣の女の子も、ポカンとした様子で私と課長のことを見ていた。
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