好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
病院に行くと、ぎっくり腰ではないって言われた。痛いのに変わりはないけど、安静にしていればぎっくり腰よりは早く治るらしい。

私は病院を出た後もタクシーを呼び、課長の家まで向かってもらった。運転手さんがすごくいい人で、部屋の前まで体を支えながら一緒に歩いてくれた。お嬢ちゃん大丈夫かい、おんぶしてあげるよ、とも言ってくれたけど、それはなんとなくプライドが許さなかったのでやめた。


鍵を開けて、課長の家に入る。

課長の家は、ひとり暮らしにしては少し広めの綺麗なアパートの二階で。中に入ると、若干タバコの匂いが広がっていた。課長に抱きしめられたときや、身体を重ねたときに感じる、いつもの課長の匂い。だからこの匂いを感じると、自分と課長の今の関係を改めて確認するようで……なんだか緊張する。

家の中にはリビングダイニングと広めの寝室がある。課長の家は、全体的に物が少なく、必要最低限の家具類と、多少の娯楽があるくらいで。寝室も例外なく、ベッドと小さなテーブルとスタンドライトと、ちょっとした本棚があるくらいだ。

私はヨロヨロと歩き、課長のベッドに横になった。何回かエッチした、ベッド。
でも今は正直、それを思い出して恥ずかしくなるような気分でもない。
……いや、そもそも恥ずかしくなること自体おかしいか。付き合ってるわけじゃないし。
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