好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
でも私も、はいそうですかと図々しくもなれなかった。

上司と部下だから、というよりは、一日中ベッドを貸してもらって、夕飯まで作ってもらって、その上その相手を床で寝かすなんて、っていう気持ちが強かった。

「私、床で寝る」

私はちょっと強い口調でそう言うけど。

「俺が床で寝る」

「私が寝る」

「俺が寝る」

「じゃあ一緒にベッドで寝る」

「そう一緒に……、って、え?」

課長は驚いたような顔で私を見る。でも、このベッドならふたりでも一緒に寝られないことはないし、実際に何度も寝ているし、それでもいいと思った。

「どうしたの? 寝ようよ」

「お前なぁ……」

やや呆れながらも、課長は「もういいや」と言って、小説を本棚に戻してベッドに入ってきた。
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