好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
ゆっくり振り返ると、課長も私と同じく、私に背中を向けて寝ていた。

「腰は痛いけど、手だけなら貸せますよ。お手伝いしましょうか」

からかい口調でそう尋ねると、「うっせ。寝ろ」と言われた。

じゃあ寝るよ。

……でも、触れられてしまったから、妙に身体が疼く。

別に、私は性欲が強い方じゃない……と、ずっと思っていたけど、実際はどうなんだろう。少なくとも、俊と付き合っていた頃はそこまでエッチしたいと強く思ったことはなかった。でも、今は……。

「……腰が痛くてもがんばるって言ったら?」

ゆっくりと目を開けて、暗い部屋に、私の声がポソッと響く。

「…安静にして、さっさと治せ。今日だって、お前がいないとやっぱ仕事の穴がでかかったんだから」

そう言われてしまい、私は再び目を閉じた。

……なんで、こんな質問してしまったんだろう。なんで、こんな風に思ったんだろう。
単に、課長とは身体の相性がいいからなのか。それとも、このベッドが気持ちよくて、チャーハンがおいしかったからなのか。

……もっと、全然違う理由なのか。

もしかしたら。私は課長のこと、ひょっとしたら自分で思ってるよりも……?

分からないや。今は、ゆっくり寝て、早く腰を治すことだけを考えよう……。
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