好きじゃないならキスするな!…好きならもっとキスをして。
ぎっくり腰じゃなかったのは不幸中の幸いで、一晩寝て目を覚ますと、昨日よりはだいぶ楽になっていた。まだ腰をピンとまっすぐにしては歩けないけど、昨日よりはずっと動ける。

「これぞ、若さ」

えらそうな顔で課長に言ったら、「まっすぐ歩けるようになったら使え、そのドヤ顔」とツッコまれた。


「今日どうする?」

服を着ながら課長が私に尋ねる。


「んー、まあ、とりあえずは帰る」

「家の人、帰ってくるのか?」

「まだ帰らない。でも、腰もだいぶよくなったし」

「家の人が帰ってこないなら、今日もうち泊まれば?」

サラッとそう言われて、ちょっとだけドキ、とする。だって、行為なしでも泊めてくれるなんて、それはまるで恋人のようで……。


「で、でも悪いから……」

「どうせ予定ないし、適当に付き合ってくれると助かるけど」

「……私、昨日と下着同じだし……」

「ああ」

結局、午前中だけ一緒に過ごして、午後は自分の家に帰ることにした。

午前中は、課長がDVDをレンタルしてきてくれて、それをリビングダイニングのテレビで一緒に観て過ごした。
少し前に流行った恋愛映画。課長いわく、『オススメコーナーにあったから借りた』とのことだった。浮気が不倫となり、不倫が修羅場となり……思ったよりドロドロな映画だったけど、店員さんにオススメされるだけあって、内容はなかなかおもしろかった。
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