【短編】ベールを脱ぐ
魅惑のベール
「君って、見た目によらず、エロいよね?」
取引先の担当者は壁の鏡を見ながらネクタイを締めていた。4面あるうちの、ひとつの壁は全面が鏡。
「え?」
突然言われた、予想だにしない言葉に驚き、胸で押さえていたバスタオルを落とした。その姿も鏡に映り、露わになった自分の胸に、慌ててバスタオルを拾い、隠す。
「清楚な顔してヤリマン。違うの?」
男は鏡の中で私を見た。鋭い視線……たとえて言うなら有刺鉄線。仕事中は全くそんな素振りはなかったのに。
勿論、私だって仕事中もベッドの上でも大人しく、お淑やかに振る舞えていたはずだ。下着だって淡いグリーンのレース、ちゃんと上下お揃い。最中だって怖いフリで彼の背中にしがみついた。
なのに。
「そうだろ?」
「ちがいます、私は……」
「エロいだろ、俺で何人目?」
「だから私」
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