【短編】ベールを脱ぐ

仕事上では丁寧で優しくて。食事中もベッドの上も優しくて。なのに、最後の最後であんな風に言われて会う約束をしないわけにもいかなくて。

騙された上に、脅迫された気分。久住との約束は来週。


*-*-*


「……え、ねえ宇賀神さん?」
「あ、ごめんなさい」
「お代わり飲む?」
「はい」


翌日、私は朝活に来ていた。会社近くのカフェで立ち上げられた読書サークル、週に2度ほど早朝に来て、お代わりOKのコーヒーを飲みながら本を読む。


「ぼうっとしてたけど、大丈夫?」
「はい。ちょっと寝不足で」
「そう」


声を掛けてくれたのはその読書サークルに来ている男性。近くの商社にお勤めとかで、何かと声を掛けてくれる。


「心配ごと?」
「いえ」
「僕でよければ相談に乗るからね」
「ありがとうございます」
「早速今夜、食事でも。あ、寝不足なら早く帰りたいよね」


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