【短編】ベールを脱ぐ
この夜、この調子で久住に抱かれた。久住は「来週また来いよ」、と帰りに吐き捨てた。
*─*─*
「そう。宇賀神さんのオススメはこの作家さん?」
翌週の夜、私は読書サークルで知り合った男性と食事に来ていた。
「ええ。主人公の心理は手に取るように分かるのに相手の男性の心理が読めそうで読めなくて」
とある直木賞作品を前に私は彼と感想を言った。私は久住との約束を放って、彼とのデートを優先させた。久住はアテが外れた。もっと私を大切にしてくれる優しい男だと思って応じたのに。
仕事では甘いマスクを被り、丁寧な応対をする。でも裏腹に、ベッドでは荒々しく私を扱う。
「“読めそうで読めない”……。そういう男性が好みなの?」
「あ、いえ……」
読めない男性。そう言われて思い浮かぶ男性は久住。
「いえ。そんなことは!」
つい声を荒げて、目の前の優しい男性を驚かせてしまった。
「どうしたの? 急に。俺、何か変なこと……」
「何でもないの。ごめんなさい、用事を思い出したの。失礼します」
「ちょっと君??」