【短編】ベールを脱ぐ
私はレストランを出て、待ち合わせの場所に向かった。
*─*─*
1時間も遅れたというのに、久住はその場所にいた。ラブホテル街を目の前にした裏路地、電柱にもたれて煙をふかしている。
「まだ、いらしてたんですね」
「ああ。来ると踏んでたから」
何故だろう、この男の前に来ると、うずく。身体も……そして心も。こんな乱暴な男、認めたくはないのに。
「ずいぶん、自信過剰なのね。テクニックにそんなに自信があるの?」
「お? 猫被り、辞めたか?」
「だってあなたが……」
久住は煙草を地面に落とすと靴底とアスファルトの間でもみ消した。そして私の右手首を掴んでグイと引き寄せた。
「やっ!」
「“あなたが……”なんだよ? 無理矢理犯したとでも言うのか? 声を上げて反応してた癖に」
「清楚な女は乱れて、初めて、綺麗になるんだよ。お前も分かっただろ? 清楚なお嬢さんのままおとなしく抱かれても所詮、そんなもの偽物」
……そう。久住の言う通りだった。あの夜、鏡に映る自分を綺麗だと思った。
久住は私の身体を背後の電柱に押し付けた。
「やりたいの? やりたくないの? 言えよ、その口で」
「……」
*─*─*
1時間も遅れたというのに、久住はその場所にいた。ラブホテル街を目の前にした裏路地、電柱にもたれて煙をふかしている。
「まだ、いらしてたんですね」
「ああ。来ると踏んでたから」
何故だろう、この男の前に来ると、うずく。身体も……そして心も。こんな乱暴な男、認めたくはないのに。
「ずいぶん、自信過剰なのね。テクニックにそんなに自信があるの?」
「お? 猫被り、辞めたか?」
「だってあなたが……」
久住は煙草を地面に落とすと靴底とアスファルトの間でもみ消した。そして私の右手首を掴んでグイと引き寄せた。
「やっ!」
「“あなたが……”なんだよ? 無理矢理犯したとでも言うのか? 声を上げて反応してた癖に」
「清楚な女は乱れて、初めて、綺麗になるんだよ。お前も分かっただろ? 清楚なお嬢さんのままおとなしく抱かれても所詮、そんなもの偽物」
……そう。久住の言う通りだった。あの夜、鏡に映る自分を綺麗だと思った。
久住は私の身体を背後の電柱に押し付けた。
「やりたいの? やりたくないの? 言えよ、その口で」
「……」