『冴えない夜も二人で…Ⅱ』
最近まで彼のことを『羊の皮を被ったヤギ』草食の中の草食と認識していて全く眼中に入れて居なかった。
でもそんな彼から
「先輩…俺と小説のネタになるような恋愛始めませんか?
俺は先輩のこと好きですから…羊とヤギからは卒業して先輩限定で狼になります。」
なんて言われた私だけれど…
その後…
彼とは何の進展もないままで、やっぱり冗談だったのかな?と思い始めていた矢先に先程の場面に遭遇してしまった。
不特定多数の女性から急にモテ出した彼
何が理由なのか?
噂話に縁のない私には皆目見当も付かない。
モテキ到来で、何よりじゃない?
そう思いつつ胸の辺りが何だかモヤモヤとしていたのも事実
飲み物は後から入れに行こうと引き返し
作業台で封詰めを開始したら淹れたてのコーヒーの香りがして振り返ると
「これどうぞ…」とコーヒーを置いてくれたのは給湯室で見かけたばかりの人
「ありがとー」そう言って飲んだコーヒーはミルク入り砂糖なし
…私好みの味だった。
「俺も手伝います」と向かいに座り作業を始める彼
「えっ…飲みに行くんじゃないの?」
立ち聞きしていた事を自ら暴露してしまい一人でアワアワと慌てる。
「あぁーあれは断りました…先輩が理不尽な残業をさせられているのに飲みになんか行けませんよ」
彼の言葉が嬉しい癖に素直じゃない私は
「別に一人でも大丈夫なのに…」可愛げのない言葉を口にする。
そんな言葉を気にすることなく
「じゃあ…これが終わったら先輩が奢ってください」そう言った彼は笑顔で作業を進める。