『冴えない夜も二人で…Ⅱ』
「「お疲れさま」」
ガチンとジョッキを合わせてからよく冷えたビールを喉に流し込んでいく
「はぁ~参った!これっていつまで続くのかな?」と課長に押し付けられた理不尽な残業に思わず漏れるボヤキ
「…この前の休日出勤の件で課長
出張で居なかった支社長に後日状況説明したら相当叱責されたらしいですよ!
『次は無いと思え』くらいに…
まぁ自分が招いたミスなのに現場に顔も出さず自分はちゃっかり休んでたんだから当然ですよね?
だからほっといても課長のことだからまたミスして何処かの支社にでも飛ばされるんじゃないですか?」
彼は飄々と涼しい顔で凄い事を言っている。
「あのさぁー・・・やっぱりいいや」
今の私は正直なところ課長のことなんかどうでも良くて、どうして彼が急にモテ出したのか?
そっちの方が気になって理由を聞いてみたいと思ったけれど…
やっぱり本人に聞くのは失礼かなって思ったし、彼の事が気になってしょうがないみたいに思われるのも嫌で聞くのを止めてしまった。
「もしかして…今日の給湯室での件が気になりました?」そう嬉しそうに聞いてくるからイラッとする。
「別に気になりませんが…でもどうして彼女と飲みに行かなかったの?」
そう聞いた私の質問には答えずに
「先輩…俺、社長に似てると思いませんか?」とんでもない発言が飛び出した。
「はっ…何言ってるの?」怪訝な顔で彼の顔を伺い見る。
「もし俺が社長の息子だったら先輩どうします?」ニコニコと聞いてくる。
「今日は手伝ってくれたから奢らせて貰うけど、そんな面倒な立場の人とは今後一切関わりたくないから
プライベートで一緒に飲むのは今日限りでおしまい…これからは玉の輿狙いの人とでも飲みなさい」
そう言ったら
「…やっぱり先輩はそう言うと思ってました」とても嬉しそうに綻んでいる彼の顔