置いてゆく
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姉にとって私は理想的な良き妹であった。
年が近い割りに喧嘩をしたことはなく、姉を慕い、すること全て真似をしたがり、どこへ行くのにも着いていった。
そんな私を姉は自慢の妹だと言い、そこに嘘偽りなどなかったのだと思う。
大好きな姉と自慢の妹。
その優しい姉が、結婚することになった。
*
「祐司さんにとって良い話と悪い話、どっちから先に聞きたい?」
姉の結婚を知った翌日、自宅から数軒先に住む幼馴染みの家を訪ねると、出迎えてくれた人物はひどくやつれていた。
「……じゃあ、悪い方から」
「姉さん、結婚するんだって」
「知ってる」
知ってるよ、とそう繰り返す祐司さんはふらふらと覚束ない足取りで家の中へと戻っていった。その背中にお邪魔しますとだけ呟いて、玄関で靴を脱ぐと彼の後を追う。
リビングに入るとそこには疲れたようにソファに身を沈みこませる祐司さんの姿があった。
深く吐き出された溜め息と一緒に、ぐったりとした身体がやわらかな生地のソファにどこまでも埋もれていきそうに思えて、目を閉じた祐司さんの顔に思わず手を伸ばした。
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