古代風より
古代の風より。6

池端家の敷地を抜け、県道に出て真っ直ぐ、五分も歩けば、道路の両側に家が建ち並ぶ通りに入る。ここが村の中心になる。
役場まであと10分足らず。

水無が浮かぬ顔をしている。
「水無、どうした?」
唐木が声を掛けた。唐木の表情は常の様に冷たい。
「……結界が破れているとしたら、柱と人骨が出土した場所だと思い、ここに来る前に透視したら僅かに結界に隙間が見えてました……でも先程見たら、私には結界が破れている様には(見え)ませんでした。……未熟です」

水無の、うな垂れた頭(こうべ)を見て唐木は冷たい表情を微かに崩し、静かに笑った。
「そうか……結界は破れていなかったか……気に病む事はない。それが分かったのなら…それでいい」

「中山君、君は?」
「はい……おそらく誰かが破れた結界を修復したものかと……」
これもまた唐木は静かに笑った。
「そうか……誰かが破れた結界を修復したか……それが分かったのなら……それでいい」

「先生!どう言うことですか?」
「水無……大きな声を出すな……悪魔は常に聞き耳を立てているぞ。……何処か他に結界の破れている所がある筈だ、巧妙に隠している。それを探さなければならない」

「しかし……先生……ここの結界を修復したのは誰でしょうか?」
「……結界を修復したのは……大町だろうな……今、この村でそんな事が出来るのは我々以外では大町しかいない」
「なんの為に……」
「ここには大町の探している(物)はなかった、という事だな。だから結界を閉じた……ここは大町にとっても
邪魔なだけだからな。大町は少なくとも今は我々の敵ではない、という事だよ。それで、結界の修復した場所に、何か見えなかったか」

唐木のその言葉を聞き、中山の心は震えた。
「はい……黒い文字で繋ぎ合せていました……」
「そうか……見えたか……大町の力も侮れないな」
また唐木は笑う。
「中山……水無」
「はい」
二人が同時に返事をする。
「お前達の力も侮れないな」
そう言ってまた唐木は笑った。唐木が続けて笑う時は、大きな運命の波が押し寄せて来ている事は中山も水無も悟っていた。

中山京子と水無利波……唐木の指導で日本でも屈指の霊能力者に成っていた。

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