年上のあなた、年下のきみ
練習終わりのぼく
「谷中先輩、ちょっといいですか」
練習終わり、帰り支度をしていた先輩に声をかける。
幸い、ジャージから制服に着替えるのに忙しい他の部員達は、誰一人として先輩の周りに群がってはいなかった。
「どうしたの?木田くん」
いつもと変わらない笑顔に、少しだけ胸が痛む。
「今日の演技について聞きたいことがあるんです。ちょっと、付き合ってもらえますか」
先輩の為に、今自分ができる精一杯の演技をした。
それを見ても、先輩はいつもと何ら変わりない。
あれでは……まだ足りないのだろうか。
「もちろん、何でも聞いて。あっ……ここはちょっと賑やかだから、隣の教室に行きましょうか」
練習が終わって気の抜けた部員達が騒がしくお喋りする教室を一通り見渡して、先輩が苦笑する。
もう部活の時間は終了した為、自由に放課後を楽しむ部員達を、先輩も叱ることができない。