年上のあなた、年下のきみ
廊下に出てすぐ隣の教室に曲がった先輩にくっついて、ぼくもその空き教室に足を踏み入れる。
段々と日が短くなってきた最近では、部活が終わればもう外は薄暗く、電気のついていない教室もまた同様の暗さだった。
「えっと……」
壁を手探りで電気のスイッチを探す先輩の手に、後ろからそっと自分の手を重ねる。
先輩の華奢な手が、ほんの少しピクっと揺れた。
「木田くん……それじゃあ、電気がつけられないから」
一瞬だけ揺れた手は動揺したように感じたのに、先輩はその一瞬がまるでなかったことのように平然としている。
それがまた、どうしようもなく悔しい。
「ねえ、先輩」
重ねた手を強く握って腕を引くと、先輩の体を反転させて顔の横に空いた方の手をつく。
背中には壁、前にはぼく。
演技指導中は立ち位置が逆だったが、これが本来ぼくの演じる役の立ち位置だ。