年上のあなた、年下のきみ
初めてのキスは、慣れないせいか少し荒っぽく、勝手がわからなくて仕掛けたこちらが戸惑ったけれど、触れた先輩の唇は……温かくて、柔らかかった。
あえてムスっとした表情で顔を離すと、大きく目を見開いた先輩の顔が視界いっぱいに映った。
まさかこんな展開になるなんて思いもしなかったのだろう、明らかに驚いているその表情が可笑しくて、可愛らしくて、ようやく少しだけ勝ったような気分になって頬が緩む。
『覚えておいて。あなたの心が例え僕に向いていなくても、あなたの瞳に僕の姿が映ることはなかったとしても、僕はあなたを……想い続けているから』
「ずっとずっと、真緒さんだけを……」
まるでささやかな勝利宣言をするように、得意げにそのセリフを口にして、ついでに耳元で囁くようにオリジナルを付け足すと、廊下から漏れてくる微かな明かりに照らされた先輩の頬が、パッと赤く色づいた。