年上のあなた、年下のきみ
今はまだ、ただの後輩でもいい、演技指導に力を入れるべき部員でもいい。
いつかきっと、それ以上の存在になってみせるから。
だから……
「年下だとかそんなこと関係なしに、一人の人間として、木田 祐也っていう一人の男として、ぼくのことを見てください」
真っ赤に染まった先輩の顔が、次第に悔しげに歪んでいく。
そんな拗ねた子供みたいな表情が、いつもの大人ぶった余裕の笑顔とは対象的で、そんな表情を引き出せたことが、ますますぼくを勝った気にさせる。
「電気、そろそろ点けてもいいですか?」
握っていた方の手をそっと解いて電気のスイッチに手を伸ばすと、それまでずっとされるがままだった先輩が、初めて自分から離れていこうとするぼくの手を握り締めた。