年上のあなた、年下のきみ
「あっ、先輩!そのライトの事なんですけど、暗転をもう少し減らしたほうがいいって言われてて、良かったらちょっと相談に乗ってもらえますか?」
「ええ、もちろん」
あっという間に先輩の視線はぼくから外れ、照明を担当している女子部員に持っていかれる。
できることなら、もう少し空気を読んで欲しかったところだが、舞台に関する相談事なら文句も言えない。
「ああーずるい!じゃあ、じゃあ、次は音響も相談に乗ってくださいよ」
「何言ってんだよ、谷中先輩は演技指導で来てくれてるんだぞ。キャストが優先だろうが。先輩、次は俺の演技見てください!」
それなら私も、僕も、とあちらこちらから声が上がり、先輩は困ったように眉を下げながら、それでも楽しそうに笑っている。
その様子を、離れた位置からまたぼんやりと見つめた。
苦しいような、悔しいような、もどかしいような……そんな気持ちが、不意に胸に湧き上がった。