年上のあなた、年下のきみ

休憩時間の私



「先輩!どうしたらぼくの事、見てくれますか」


ついさっきまで自分の靴音しか聞こえていなかった廊下に声が響く。

振り返って見ると、先程演技指導を行った後輩の木田くんが、唇を噛み締めて立ち尽くしていた。


「あなたの演技は、まだ少し固さがあるけれど、練習を重ねていけば取れていくはずよ。もっと自然な感じでセリフが言えたら、グッと良くなると思う。そうなれば、地区大会はばっちりね」


微笑みながらさらりと放った言葉に、木田くんの顔が悔しげに歪んだ。

抑えようとしても抑えきれず、そうやって自分の感情を素直に表情に出してしまうところが、若くて眩しい。

眩しくて……私には遠い。


「部活の話をしているんじゃありません!!ぼくは」


私と木田くんと、それ以外は誰もいない廊下に、悲しげなでも必死な声が響く。
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