年上のあなた、年下のきみ
プレッシャーをかけすぎな気もしないでもないが、彼の気持ちが迫り来る地区大会ではなく他に向いてしまっている今、これくらいプレッシャーをかけて自覚と責任を持たせる荒療治も必要だ。
右手で軽く拳を握ってガッツポーズを作ってみせると、立ち尽くす木田くんに背中を向けて歩き出す。
「待ってください、谷中先輩!」
追いすがるような声に足は止めず、顔だけで振り返る。
「まだ、ぼくの質問に対する答えをもらっていません」
木田くんの真剣な表情と必死さが伝わってくる声音に、返す言葉を探してしばらく沈黙する。
先程まで二人の話し声以外はシーンと静まり返っていた廊下に、遠くの方から休憩を終えて部室に集まり出す部員達の声が響いてくる。
顔だけで振り返っていたのを今度は体ごと振り返って、真っすぐに木田くんと向き合う。
どこまでも真剣な表情が、真っすぐにこちらを見つめて答えを待つその瞳が、どうしようもなく眩しい。