年上のあなた、年下のきみ
「ごめんね、木田くん」
懐かしい母校の廊下に、聞かせるつもりのない謝罪が空虚に響く。
もし私が、木田くんの想いを真剣に受け止めたら、どうなるだろうか……。
考えても詮無いことが頭に浮かぶ。
木田くんが高校を卒業して制服を脱いだなら、大学に行ったとして卒業して学生ではなくなったなら、例え年下だったとしても、もう子供には見えなくなるのだろうか……。
私にとって年下の男の子は、一つでも年が下であるだけで恋愛対象から外れてしまう。
でも、もしも―――そんなあるかどうかもわからない“もしも”を想像してしまうくらい、私もまた木田くんに心乱されているのだと気がついたとき、自嘲めいた笑みがこぼれた。
「何やってるのかな……私」
小さく呟いて、少しだけ振り返ってみる。
角を曲がってしまったから、もう木田くんの姿は見えない。
彼はまだ、あの場所に立ち尽くしているのだろうか……。
真剣な目をした木田くんの姿を思い浮かべ、ほんの少しだけ苦笑する。
「若いっていいいなあ……」