年上のあなた、年下のきみ


「ごめんね、木田くん」


懐かしい母校の廊下に、聞かせるつもりのない謝罪が空虚に響く。

もし私が、木田くんの想いを真剣に受け止めたら、どうなるだろうか……。

考えても詮無いことが頭に浮かぶ。

木田くんが高校を卒業して制服を脱いだなら、大学に行ったとして卒業して学生ではなくなったなら、例え年下だったとしても、もう子供には見えなくなるのだろうか……。

私にとって年下の男の子は、一つでも年が下であるだけで恋愛対象から外れてしまう。

でも、もしも―――そんなあるかどうかもわからない“もしも”を想像してしまうくらい、私もまた木田くんに心乱されているのだと気がついたとき、自嘲めいた笑みがこぼれた。


「何やってるのかな……私」


小さく呟いて、少しだけ振り返ってみる。

角を曲がってしまったから、もう木田くんの姿は見えない。

彼はまだ、あの場所に立ち尽くしているのだろうか……。

真剣な目をした木田くんの姿を思い浮かべ、ほんの少しだけ苦笑する。


「若いっていいいなあ……」
< 9 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop