不器用な愛の示し方。


小さくため息をついた。

でもね、そんな彼と1度だけ話せたことがあった。


彼が生徒手帳を落としてそれを私が拾った時。

漫画みたいな話。


でも、その時は本当どうしようか迷った。


その時、彼が走ってきて、何事かと思ったら

「生徒手帳、俺の。」

と仏頂面で言った。


私は怒らせたと思って何回も謝りながら手渡す。


「そんなに謝らないで。俺も仏頂面でごめんな。まじで助かった。じゃあ。」

そう言って、あの柔らかい優しい笑顔で去っていった。


私が彼を見たのはその時が最後だった。

私が電車通じゃなくなったからだ。

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