不器用な愛の示し方。


電車に乗る度に目が合う女の子。


サラサラの黒髪を耳の下で緩く結んで眼鏡をかけている女の子。


いつもいつも本を読んでいた。


いつの間にかその女の子を見るのが日課になっていた。

そんな日々が続いていたのに、少ししてからあの女の子と目が合うようになった。


ドアが開いて乗る度に本を読んでいる顔を上げる。


その時に目が合う。

ほんの、数瞬間。


ほんの数瞬間のはずなのに、俺には数秒にも感じられた。

目が合うといつも恥ずかしそうに俯いてしまうから、たくさん目は合わなかったけれど。


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