恋する予感



「ちょっ…もう起きたから!っ…大丈夫だから、降ろして!」

「あんまり騒ぐと、近所迷惑になりますよ?それに、もうすぐ着きますから、別にこのままでも良いじゃないですか」

「で、でも…」

「先輩。俺、今両手が塞がってるので、起きたんなら自分で鍵出してくれません?」

「あ…ご、ごめん」








私は佐伯に言われた通り、鞄の中から鍵を出した。


そして、此処でようやく話を逸らされたことに気付いたのである。



時は既に遅く、佐伯は笑いが堪えきれないといった表情で私のことを見つめてきた。









「な、何よ…」

「いえ、別に何でもないですよ?」

「顔が何でもないように見えないけど?」

「そうですか?それは失礼しました。…あ、着きましたよ?鍵開けて下さい」








従うのはあまりにも癪であったが、これ以上騒いで他の住人に出くわす可能性があるのではないかと思い始めた。
この状況で他の住人に会うだなんて、それは嫌だと思い直し、佐伯の言う通りに従った。



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