忠実わんこに愛を囁く
whisper…
「せーんぱいっ! 今日こそ飲みに行きません?」
「行きません」
「うっ。じゃあ、いつ予定空いてますか!」
「空いてません」
淡々と繰り広げられた会話の応酬に内心辟易しながらも、顔には出さずに塩対応。
それが行われているのは、21時を回ったオフィス内。
辺りは静まり返っているから、このフロアにいるのは私とコイツだけなんだろう。
それにうんざりしつつ、ため息が出そうになるのをぐっと堪えた。
私の一挙手一投足にコイツがいちいち反応して、面倒だから。
「先輩ってば! 俺の話ちゃんと聞いてます?」
私の心情なんて何も分かっていないであろうコイツは、私がテキトーな対応をしているのにも拘わらず、しつこく絡んでくる。
本当に、面倒だ。
「ねえ、先輩ってば!」
「聞いてません」
正直、この会話は嫌という程している。
だから、私は相手の顔も見ず、目の前のパソコンから視線を外すことはない。
コイツは私のそういう態度に慣れたのか、気にせず話しかけてくるんだけど。
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