忠実わんこに愛を囁く

 だって、どんな美人からの誘いも断っていたのに、こうして私を誘ってくるわけだから。


 理由は知らないけれど、私はコイツに懐かれてしまったのだ。


 それか、コイツは真正のマゾヒスト。


 どれだけ冷たくしても、懲りずに誘ってくるから。


 そして私は、こいつの本心が見えないっていうのもあって、ずっと食事の誘いを断り続けている。


 騒がしいコイツが実は苦手、っていうのも本音だけど。


 ……だって、女の子にいつでもヘラヘラした笑顔向けてて、なんかムカつくし。


 ――そんなわけで、人気のあるコイツになぜだか懐かれた私は、日々苦労。


 終業と同時に毎日のように食事に誘われては、断って。


 それだけならいいんだけれど、コイツは皆のいる前で堂々と誘ってくるもんだから、このフロアの裏ボスに、私は目をつけられてしまったのだ。


 『なんでアンタが君島くんに誘われてんの?』みたいな目で見られるし、非常に怖い。


 猫目の黒髪美人なのに、性格が残念。


 男性社員にはイイ顔してるみたいなんだけど。


 そして、やることが地味に面倒で、迷惑だ。

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