忠実わんこに愛を囁く

 無視しているのに、君島は同じ言葉を繰り返す。


 正直、仕事の邪魔だ。


 騒ぐだけなら外でやってくれ。


 大体私が残業してるのは、元はと言えばコイツが原因だ。


 コイツが無駄に絡んでくるから、私が目をつけられたんだよ。


 ムカムカと何かがこみ上げてくる。


 本当にいい迷惑だ。


 私がそんなことを考えてるなんて思いもしないんだろうな。


 隣りで駄々をこねる、能天気なコイツは。


 それにしても、本当に。


「アンタ、マジでうるっさい!」


 私の中の何かがついに切れた。


 今まで怒鳴ることなんて一度もなかったんだけど、今日は何でかな、無性にイライラしてる。


 さっき食べたチョコレートの所為かな。


 やっぱりいつもと同じのを買っておけばよかった。


 私の大声を初めて聞いたであろうコイツは驚いたのか、目を見開いていた。


 あれだけ煩かったのがぴたりと止んだ。

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