忠実わんこに愛を囁く
「は……?」
マヌケな声が口から漏れた。
今、コイツ何て言ったの?
何で、私が残業しているのを、自分の所為だなんて言うの?
意味分からない。
びっくりして君島を見れば、彼は困ったように笑っていて。
「俺、それに気づいたのつい最近で。……結構前から、こういうことってありましたよね? すいません」
うな垂れて謝る君島は、なんだか別人みたいだった。
「あー、君島の所為じゃないから。ちょっと、コーヒー買ってくる」
なんだかこの空気が嫌で、逃げ出したかった。
口の中に残る甘さも消したかった。
それなのに。
「先輩っ!」
席を離れようとした私、それを追うように勢いよく立った君島。
彼に腕を引かれ、すぐ横の壁に押し付けられた。