忠実わんこに愛を囁く

「は……?」


 マヌケな声が口から漏れた。


 今、コイツ何て言ったの?


 何で、私が残業しているのを、自分の所為だなんて言うの?


 意味分からない。


 びっくりして君島を見れば、彼は困ったように笑っていて。


「俺、それに気づいたのつい最近で。……結構前から、こういうことってありましたよね? すいません」


 うな垂れて謝る君島は、なんだか別人みたいだった。


「あー、君島の所為じゃないから。ちょっと、コーヒー買ってくる」


 なんだかこの空気が嫌で、逃げ出したかった。


 口の中に残る甘さも消したかった。


 それなのに。


「先輩っ!」


 席を離れようとした私、それを追うように勢いよく立った君島。


 彼に腕を引かれ、すぐ横の壁に押し付けられた。


< 9 / 10 >

この作品をシェア

pagetop