執事が男に変わる時
決められた縁談
都会の数少ない街路樹が赤にオレンジに色づき、冷たい木枯らしが吹く。

そろそろ就職活動を始める大学三回生の秋。私にはやりたい仕事があった。

ある日、お父様は私を部屋に呼びそっけなく見合い写真を手渡した。「就職活動はしなくていいから、花嫁修業に専念しなさい」という言葉と共に。

相手がパーティーで私を見かけ、ぜひにと希望しているらしい。

有名な食品メーカーの社長令嬢……といっても愛人の娘の私は、お父様にとってはとっくに捨てた女の子どもだ。

十三歳の時に母は私をあっさりと捨てて、別の男と結婚した。
お父様と本妻からすれば厄介払いできる絶好の機会なのだろう。
< 1 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop