記憶と共に幽霊と。
女の子はこちらに気づき、ペコリとお辞儀をしてパタパタと近づいてきた。
「昨日は…母が…失礼しました…」
か細い声で、聞こえるギリギリの声で話す。
私は女の子と目線を合わせ、
「かまわないわ。また、お母さんに会わせてもらえる?」
と言って笑った。
女の子はたじろぐように後ずさりすると
「母は…まだ、心が不安定な状態です…。それが…私のせいだと…分かって…いますが…」
と言って顔を背けた。
気になることはたくさんある。
聞きたいこともある。
でも、私がやることはお母さんに伝言を伝えること。
シンプル。一つだけ。
「いいよ、それでも。会わせて」
優しく、言った。
女の子は、顔を背けたまま、門扉を開いた。
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