記憶と共に幽霊と。
それからの事はよく覚えていない。
病院に電話したつもりが警察に電話していたり、両親はどうやら自殺だったようで、警察の人に一杯話をしなくちゃいけなかった。
今、覚えているのはお葬式のとき。
さわさわと大人たちは私を誰が引き取るかで揉めているようだった。
喋ってもいいのだろうかと思いながらお香を焚く大人たちを眺める。
お母さんとお父さんが亡くなって、私はどうしようかとぼんやり考えていた。
二人の両親、おじいちゃんとおばあちゃんはずっと前に亡くなっていると聞いていた。
二人に兄弟がいたらその人に引き取られるのだろうなと結論が出る頃には大人たちも話がまとまっていた。
「明日香ちゃん…辛いだろうけど頑張ってね…」
見たことのない人が話しかけてきた。叔母さん…なのかな?
「何を頑張るの?あすかは誰と暮らすのですか?」
私が聞くとおばさんは私から目をそらし、
「あのね…あなたには言いにくいのだけど…だれも、引き取りたがらなかったの…」
と言った。
誰も?ならわたしは…どこにいくのだろう…。
おばさんは続けて
「それでね…唯一引き取りたいって言ったのが…男の人なの。まだ独身でね、ちゃんと稼いでいるしあなたさえよければ…彼のもとに住んでみたらと思ったのよ…どうかしら?」
男の人…か…。
どんな人なんだろう…。
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