悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
◆*°間接キスくらいで……
「わぁ、ひよちゃん相変わらず上手!」
2月に入ったある日の美術の授業中、あたしのポスターボードを覗き込んだ亜美が声を上げた。
自分の好きな写真を描写していて、あたしは気持ち良さそうに眠っている犬を描いている途中だ。
鉛筆を置いて、亜美に笑いかける。
「最近、もっと絵の勉強をしたいなって思い始めたよ」
ポスターボードを少し離して、まだ白黒の絵を眺めながら言った。
「大学とか専門とか、具体的なことはまだ全然決めてないけどね。でも、親の言いなりになったまま進路を決めるのはやめようって思って」
亜美は少し目を見開いて、驚いたようにあたしを見つめる。
「どうしたの、ひよちゃん。急に心変わり?」
「柳達を見てたらさ、あたしこのままじゃ人生つまらないよなーと思ったんだよね」
何もやらないまま諦めていたら、きっと色々なことを損するんだろう。
柳達が楽しそうにしているのを見るたびに、そう思うようになっていた。
「……そっか。実は私も、男の人の苦手意識を克服したいって思ったの、柳くん達のおかげなの」
そう言って、亜美はにこりと微笑んだ。