悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
あたしの目に留まったのは、ギターの形をしたチョコレート。

赤い箱もちゃんとギターケースの形をしていて、とってもオシャレ。

柳にあげたら喜びそう──


……って、何でまたアイツの顔が思い浮かんじゃうかな。

あたしから柳にあげることなんて出来ないっていうのに。

柳にはリカが本命チョコを渡すんだから、たとえ義理でも誤解を招きそうだし。

ていうかまず、アイツにあげる理由がないしね。


あたしは可愛いギターから顔を背け、お目当てのチョコを買うと、そそくさとその場を後にした。


時刻は午後3時を過ぎたところ。

子供にとってはおやつの時間だと思うと、なんだか甘いものが恋しくなってくる。


「わ、これ美味しそう」


紙袋をぶら下げながら駅ビル内を歩くあたしが目についたものは、たっぷりのホイップクリームの上にキャラメルソースが掛かった、カフェラテの写真。

喉も渇いたし、これを飲みながら電車を待とうかな。

あたしはブーティの踵を軽やかに鳴らしながら、コーヒーの香ばしい香りが漂う店内に入った。

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