悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「ありがとうございましたー」


気持ちの良い店員さんの声に送られて、白いカップを手に再び歩き出す。

改札口の前で立ち止まり、バッグの中から定期を出そうとしていると。


「俺らのくされ縁は健在だな」


右上からそんな声が聞こえて、あたしはバッと顔を上げた。

振り仰ぐとそこには、いつものアメカジスタイルの柳が、クールな表情であたしを見下ろしていた。


「や、柳! 何してんの!?」

「さっきバイト終わって帰ろうとしてたとこ」


今日もバイトだったんだ……最近のあたし達、本当に偶然会いすぎ。

突然のことで心臓がぴょこぴょこと跳ねるのを感じていると、あたしが持つ袋を観察するように見て柳が言う。


「ひよりは……バレンタインの買い出しってとこか」


うわ、見ないでよ!

なんとなく気恥ずかしくて、反射的にサッと袋を後ろに隠す。


「俺の分も入ってんの?」

「そんなわけないじゃん」

「だよねー」


へらりと笑う脱力系柳。

なんかこの人と話してると、あたしまで力が抜けてくる気がするよ。

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