悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
もう片方の手に持ったままだったカフェラテを口に運びつつ、素っ気なく言う。


「柳にはファンの女子がたくさんくれるでしょ」

「義理ばっかもらっても嬉しくねーよ。まぁ好きじゃないコから本命もらっても困るんだけど」


たしかに、それもそうか……。

じゃあ、明日リカが渡すチョコレートは受け取るの?


ぼんやり考えながら、まだ温かいカフェラテを口に含むと。


「ひよりがくれるなら、ありがたくもらってたけどな」


口の中にまったりと甘さが広がると同時に、何気ない調子で言われた言葉が耳に流れ込んできた。

それって……どういう意味?

彼の真意はわからない。でもきっと好意的なのだろう言葉に、少しだけ嬉しさを感じる自分がいた。


目線を上げると、柳は意味深な笑みを見せる。


「チョコの代わりにもーらい」

「──あ」


柳の手がこっちに伸びてきたと思った瞬間、あたしの手からするりと抜かれるカップ。

奪われたそれは、彼の唇へと寄せられていった。

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