悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
お父さんと大地は、あたしが選んだチョコレートをとっても喜んでくれた。
あたしにとっては代わり映えしないバレンタインだったけれど、世間ではいくつの恋が生まれたんだろうか。
もしかしたら、リカも超ハイテンションでピンク色の空気を振りまいているかもしれない……と思うと憂鬱だった月曜日。
教室へ入ってリカと顔を合わせたその時、あたしは鳩が豆鉄砲をくらったような顔になったに違いない。
だって、彼女があたしを見た瞬間、その大きな瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちたから。
「リカ……っ!?」
「ひよりぃ~~!」
悲劇のヒロインよろしく、両手で顔を覆って大泣きする彼女を見ていれば、バレンタインの結果は明らかだった。
お昼休み、亜美と一緒にリカを屋上に誘って、昨日の話を聞くことにした。
ベンチがいくつか備え付けられ、春には色とりどりの花が咲き乱れる花壇に囲まれた屋上庭園。空気は冷たいけど、晴れているから日差しは温かい。
「まさか……この私がフラれるなんて~~!」
ベンチに座り、どこがダメだったのかわからないと言って泣く、相変わらず高飛車なリカに苦笑いするあたしと亜美。
でも、好物らしい今日のランチのカニのトマトクリームパスタも食べる気が起きないと言うから、よっぽど彼女はショックなんだろう。