悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
◇*°その口、塞いでやろうか
柳がリカの告白を断ったということには、少しびっくりしたけれど。
二人のノロケ話を聞かされることにならなくて、あたしは密かにホッとしていた。
柳とは相変わらず時々ラインのやり取りをしているけど、リカの話はお互い一切していない。
“3月は卒業ライブがある”とかいう話を聞くと、またバンドを見に行きたくなる。
そういう機会があったら、今度は亜美と二人で行こうかな。
そんなことを考えていたら、あっという間に期末テストがやってきてしまった。
勉強の息抜きにイラストを描いていたら、そっちに集中しちゃったりして、いつになく勉強がはかどらず。
不安だったあたしは、お守り代わりに、柳がくれた可愛いピックをペンケースに忍ばせて、テストに臨むことにした。
なんとなく、これを持っていると頑張れそうな気がしたから。
……でも、現実はそんなに甘くなかったらしい。
「珍しく点数がいまいちじゃないか? どうかしたか、ひより」
3月初旬のある日の夜、夕食後に返却されたテスト用紙を見ていたお父さんが、不思議そうにあたしに視線を移す。
やっぱり言われたか……。