悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「ひより……!?」


柳の声と、突然演奏が止まったことでお客さんがざわつき、あたしに視線が注がれる。

うわ、やっぱり注目されてる……!

どぎまぎするあたしに、ギターを立て掛けた柳が近付いてきた。

彼がテーブルの横を通り過ぎる時、ほろ酔い状態らしき一人のおじさんが、ニヤつきながら言う。


「おっ? なんだ、兄ちゃんの彼女か?」

「違いますよ、くされ縁でペットのひよこです」


勝手にペットにするなー!

さらりと答える柳に心の中でつっこんでいるうちに、彼はすぐそばに来ていた。

怪訝そうにする柳の目を、なぜかまっすぐ見れないあたし。


「どうした? こんな時間に」

「んーと……プチ家出?」

「はぁ?」


呆れたように目を細める柳に、あたしはへらっと笑ってみせた。

彼は一瞬困ったような表情をしたものの、

「ま、とりあえず座れば? 何か飲み物作ってやるよ」

と言って、あたしを空いているカウンター席へ促してくれる。


カウンターの向こうには、ユアフールの皆と来た時に会った女性店員さんがいて、「あら、いらっしゃい!」と明るい笑顔で迎えてくれた。

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