悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
グラスを持って、カウンター越しにあたしの前に立った柳は、オレンジ色の液体が入った瓶を掲げてみせる。


「お子ちゃまにはオレンジジュースか?」

「子供扱いしないで」

「家出してくるなんて子供じゃねーか」


ぐ、と言葉に詰まる。

悔しいけど、たしかにそうかもしれない……。

口を尖らせて黙るあたしに、柳はクスッと笑いを漏らした。


「でもなんか感心したわ。ひよりでもそういうことするんだって」

「……感心されることじゃないけどね」

「だな」


軽く笑う柳につられて、あたしも笑ってしまった。


オレンジジュースは他の液体と一緒に銀色のシェーカーに入れられて、柳の手によってシェイクされる。

そこからグラスに注がれたのは、ノンアルコールのカシスオレンジというものらしい。


シェーカーを振る姿もなんだかサマになっていてカッコよかったし、バーテンダーにもなれるんじゃない?と提案してみたのだけれど。

「無理だよ。俺コレしか作れねぇもん」

と、正直に言う柳がおかしくて、あたしはまた笑った。

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